日に日に、夜をひとりで越せなくなっていた。


翌朝死にたい衝動に襲われることはわかっているのに、夜の寂しさに勝てなかった。


どんな最低な行為でもできた。

体に傷が残ろうが、どれだけ無茶をしようが。


そこに愛がないのなら、わたしは何だってできた。








――4月がもうすぐ終わる。


わたしはいつの間にか店を無断欠勤するようになっていた。

友香たちから逃げるのは悔しい、と思えるほどの気力は、もうなかった。


有り余った時間を埋めてくれたのは、やはり行きずりの男たち。

この日、知り合ったのはノブアキという男だった。


ホテルに行って服を脱ぐと、彼の手首には何本も傷跡があることに気づいた。


「あ、これ? リスカやで」


ノブアキは慣れたように説明した。


「10代の頃、家が荒れててな。ストレス溜まるたびに切るのが習慣やった。
今でも傷が残ってるねん」

「……痛い?」

「今はもう、痛くないな」


わたしは、ノブアキの傷あとに口づけた。

とても、とても悲しかった。



こんなに死んだ心でなぜわたしは生きているんだろう。


命ある者には幸せになる権利があるという。

だけどそれは、実は義務だ。

幸せへの努力をする、義務。


本当はすべての人間に幸福が行き渡るはずないのに、努力できない人間を追い詰める。



手首を切ったときのように抱いてほしい、と、わたしはノブアキにお願いした。