崩れるように、鏡の前に座り込んだ。


まったく体に力が入らない。

タバコを吸おうとするけれど、ライターを持つことすらできないほど震えている。


――『水野っ!』


あの頃より少し低くなった声。


とうに思い出になった人なのに、今でもこんなに心を乱すなんて。

それとも年月が経った分、よけい残酷なものになってしまったんだろうか。


鏡を見ると目が真っ赤に充血していた。

顔全体は血の気を失って蒼白だ。


そして、ひどい顔をしたわたしの背後に、友香の姿が映った。


「なんであんたが佐伯さんと同伴するねん」

「……は?」


この女は何を言っているんだろう。

それどころじゃないわたしは、鏡越しにイラついた表情を返す。


開いたドアから数人の女が入ってきて、友香のそばに並んだ。


「佐伯さんはずっと友香ちゃんを指名してたん、あんただって知ってるやろ?」

「今日の夕方、あんたと佐伯さんが歩いてるん見た子がいるんやけど。
そんな早い時間から会って、何してたん?」


ああ……そういうことですか。


要するに、客を取った取られたの修羅場。

そしてわたしはまさにその中心で追い詰められている――はずなんだけど、

今は気持ちが完全に別のところに飛んでいて、他人事にしか聞こえなかった。


「あんた、他の子のお客さんにも手出してるんちゃうん?」