不安げに泳ぐ瑠衣の視線は、やがて決意したように、わたしの唇へと落ちてきた。
 

ふたりの前髪が触れ合って、思わず体に力を入れると、瑠衣は温かい両腕でわたしを包み込んでくれた。


「先生、怖い?」


たずねながら、髪を何度も撫でてくれる。

その仕草はまるで過去をふりはらう儀式のよう。


「ううん、平気」


「そっか。……おかしいなあ」


ため息まじりに瑠衣が言った。


「――俺は、なんかすげえ怖いよ」


泣いているのかと思うような声だった。


わたしは瑠衣の首のうしろに腕をまわし、深く深く口づけた。 


1ミリの隙間すら許せなくて、糸がもつれ合うように、体を絡ませた。