「前に言ったやろ? わたしの過去のこと、元彼でひとりだけ知ってる人がいるって」

「………」

「卓巳っていうねん、その人」



――わたしの秘密。



ずっと誰にも言えず鍵をかけてきた


欠陥品であるわたしの真実。








卓巳とは、高校2年でクラスが一緒になって付き合った。


人当たりがよくて、ルックスもよくて、男女問わず愛される男の子だった。

わたしたちは幼いなりに真剣に恋をして、少しずつ距離を縮めていった。


初めて卓巳と体を重ねたのは、17歳の秋。


そのわずか2ヶ月後に、あのお正月の忌まわしい出来事が起こった。


虐待の記憶がよみがえり、精神のバランスを失いかけたわたしに、卓巳は献身的に尽くしてくれた。



絶対に俺が支えるから、と、瑠衣とまったく同じことを言ってくれた、17歳の卓巳。



その言葉に偽りはなかった。


卓巳は、決してわたしを裏切らなかった。


裏切ったのは――わたしの方だった。