――『わたしね』


あの言葉がよみがえる。


――『本気で好きなんですよ。瑠衣のこと』


あのときの、決意に満ちた涼子ちゃんのまなざし。


瑠衣を一番に想い、誰よりも幸せにできるという自信にあふれた瞳。


わたしには、あんな目はできない。



どうして今まで気づかなかったんだろう。


知っていれば

もっと早く涼子ちゃんの気持ちに気づいていれば


この想いが育ってしまう前に、摘み取ったのに。



もう、どうすればいいのかわからないよ。



「先生、どうしたん?」


尋ねられ、大きく息を吸った。


「わたしは……片瀬くんにふさわしくないねん」

「は?」


苛立ちに似た声で聞き返された。


「何をワケのわからんこと言うてんの?」

「………」

「なあ、先生」


瑠衣はわたしの肩を揺すり、顔をのぞきこむ。


「答えろって!」


低い叫びが部屋に響き、ソファの背もたれに力ずくで押し付けられた。



つかまれた肩が痛くて、


心が痛くて。