「やめてよ、お父さんたちはまだまだ老後なんて早いやん」

「そんなことないぞ。今後の楽しみといえば、孫が増えていくことくらいやから」


お父さんの言葉を、わたしはあいまいな笑みで流した。


「でも葵、ホンマに結婚考えてる人とかおらんの?」


それまで聞いていたミキ姉が言う。


「あ、予備校じゃあんまり出会いがないか」


眠ってしまった長女をひざに乗せ、アヤ姉も言った。

気づけば、全員がわたしをじっと見ていた。


「んー、まあ、そのうち考えるよ」


ボソッと言うと、みんなの顔にあきれたような笑いが浮かぶ。


好き勝手ばかりやって将来のことを考えていない末っ子
というのが、この家でのわたしのポジションだ。


「あ、あのね」


わたしはおもむろに箸を置いて、


「今日は、わたしからも大事な話があるねん――」


ひそかに決意していた“あること”を打ち明けた。