「栗島~! シャンとせぇ!」


野次のような声を友達がかけると、栗島くんは泣きそうな視線をステージから送ってくる。


演奏が始まった。

けっして上手ではないけれど、熱心に頑張る姿は、見ていて清々しい。


わたしはそれまで予備校での栗島君しか見たことがなかったから、彼がこんな表情をすることを知らなかった。


17歳の彼らの周りには、360度、可能性が広がっている。

そう思うとなぜか胸が苦しくなった。



無事に出番を終えた栗島くんたちが舞台袖に消えと、みんないっせいに、ホッと胸をなでおろした。


「あいつの出番も終わったし帰るか」


人込みをかき分けて出口の方へと進む。


だけど満員のお客さんの中で、背の小さいわたしは思うように歩くことができなかった。

涼子ちゃんたちはそんなわたしに気づかずに、どんどん離れていってしまう。


そのとき、新しいバンドが登場し、ライブハウスの中がいっきにヒートアップした。


ステージに押し寄せる人たちに突き飛ばされる形で、わたしは人波からはじき出された。


膝がガクンと折れ、視界がいっきに下降する。

転んだ――

と思ったら、すんでのところで腕をつかまれた。