「あれ~? 水野先生も来たんですか?」


いつものメンバーだ。

とっさにその中に瑠衣を探したけれど、いなかった。


「うん、栗島くんの晴れ舞台を見に来ちゃった」

「きっとあいつ喜びますよ。出番はこの次らしいっす」


音楽がうるさくて、大きな声で話さないと聞こえない。

まだ来て10分も経っていないのに疲れてくる。


「そういえば瑠衣のやつ、今日は予備校行ってました?」

「来てへんかったよ」

と、わたしより先に涼子ちゃんが答えた。


「やっぱり? 電話しても出―へんねん。
今日はライブ見に来るって言うてたのになあ」


わたしは無意識に、鞄を持つ手を強めた。


ずっと電源を切ったまま、ここに入っている瑠衣の携帯。

「わたしが持ってるよ」とは決して言えない関係なんだ。


わかっていたけど、痛感させられた。 





しばらくするとバンドが入れ替わり、ガチガチに緊張した栗島くんがステージに現れた。