「わたし?」

「いや、正直に言うとその人と行く予定やったんです。でも連絡つけへんし」

「涼子ちゃん……」


それはほとんど、好きな人が瑠衣だってバラしているようなもの。


わたしには知られてもいいと思っているのか。

それとも、そんなことに頭が回らないくらい切羽つまっているのか。


罪悪感が針となって心を刺し、思わず言ってしまった。


「じゃあ一緒に行こうか」

「ほんまですか?」


ぱっと笑顔になる涼子ちゃん。

すぐに自分がやっかいなことを口にしたと気づいたけど、もう遅かった。








ライブハウスという場所に来たのは初めてだ。

完全に場違いな所に来てしまった、とまず思った。

地下にある扉を開けるとそこは音と熱気の世界で、若いエネルギーがうねっていた。


涼子ちゃんとふたりでステージから一番遠い壁際に立っていると、見慣れた顔ぶれが声をかけてきた。