その日の授業に、瑠衣は出てこなかった。

きっと今ごろ家族で話し合っているんだろう。

ひそかに鞄に入れて持ってきた彼の携帯を、早く返したいのだけど。


12月25日の予備校は、やはりと言うべきか、閑散としている。

登校した数少ない生徒たちも昨日遊びすぎたのか、授業に身が入らない様子だ。


そのうちのひとりが、涼子ちゃんだった。


「昨日カラオケ歌いすぎたせいで、喉が痛くて痛くて」


授業のあと、涼子ちゃんは笑いながらわたしに話しかけてきた。

確かにほんの少し声がかれているだけで、普段と変わった様子は見当たらない。


だけどわたしは彼女の目を正面から見ることができなかった。


「ねえ……昨日言ってた人には、気持ち伝えた?」


意を決して、そうたずねてみた。

不自然にならないように、なるべく笑顔で。