携帯に手を伸ばしかけ、いやいや、と首を振る。

やっぱり、勝手に見るのはよくないから。

わたしは“不在着信1件”と表示された携帯を、テレビの上に置いておくことにした。





夕方の授業までまだまだ時間がある。

バスタブに湯をはり、読みかけの本を持ってお風呂に入った。


湯気でくもったバスルームにいると、少しずつ気持ちがほぐれていく。

バラの香りがする入浴剤は、こないだミキ姉が送ってきてくれたものだ。

ぶくぶくと息を吐きながら、顔の半分をお湯の中に沈めた。



30分ほど半身浴をして本を読み終わった時だった。


さっきの着信音が、ガラスの扉越しに響いた。


リビングから聞こえてくるその音は、こんどはなかなか止まらない。

この場にいない持ち主を呼び続ける携帯はなんだか不気味に思えてしまう。


お風呂を出て体を拭いていたら、また鳴った。


それからもきっちり30分おきに着信があった。



もしかしたら……携帯を置き忘れたことに気づいて、本人がかけてきているのかもしれない。


そう思いついたわたしは、恐る恐る瑠衣の携帯を手に取り、着信履歴を開いた。


そして――