「それは無理」


瑠衣の声が、急に低くなった。


「俺が先生のことほっとくとか、絶対無理やから」


裏腹に、わたしの体温は高くなった。


もう片方の手も耳元にそえられて、顔を両側から包まれる。

それ以外はどこもつかまれていないのに、ちっとも体が動かない。


瑠衣の後ろで鋭く光る半月が、徐々に見えなくなっていった。


初めて知った。

瑠衣のまつげがこんなにも長いこと。


わたしを映す彼の瞳が、こんなにも優しいこと――。


「やっ」


唇が触れる直前で、わたしは顔をそらした。