「あの、授業でわからないところ質問したいから、こんど職員室に行ってもいいですか？」

「……えっと」


こういうお願いをされることは多々あって、わたしは毎度答えに困ってしまう。


一応、生徒からの質問を受け付けるチューターというスタッフがいるのだから、そっちに頼んでくれと言うべきなんだろうけど。


やっぱり、面と向かって相談されると断りづらいのだ。


わたしが困っているのを察してか、瑠衣はあわてて鞄からノートを出して広げた。


「そんなに時間はとらせないです。質問はちゃんとノートにまとめてから行くし」


ほら、と言って瑠衣はノートに目を落とす。

つられて見ると、たしかによくまとめられたノートだった。

これなら、手際よく進められそうだ。


「うん、わかった。いいよ」

「ほんまですか？」


瑠衣の表情がぱぁっと明るくなった。

その笑顔に、なぜかわたしはひるんでしまう。


「あ、でも他の生徒まで質問したいって言い出すとキリがないし、時間はとられへんよ？」