マンションから200メートルほど離れた児童公園のベンチで、彼を待った。

心なしか体が震えて、それが寒さのせいなのか、それとも別の理由なのかわからなかった。


公園の前を通り過ぎる、車のヘッドライトやバイクの音。

そのたびに彼が来たんじゃないかと顔を上げる。


こんなことが、前にもあったな。

梅雨の土曜日のスターバックス。

あれから半年も経っていないのに、彼を待つわたしの心はこんなにも変化してしまったんだ。


ハァッ、と吐く白い息のむこうで、夜の道路が光った。

空気を震わすエンジンの音が近づいてきて、止まった。


いっきに動悸し始めるわたしの胸。


瑠衣はわたしを見つけると、慣れた仕草でヘルメットを外してハンドルにかけた。


ゆっくりと歩いてくる彼に、わたしは声を出せない。

だって、なんか、恥ずかしい。


こんな夜更けの公園にふたりきりで待ち合わせたんだって、今さら急に自覚して。