「えっ!? ……あ、あの」

『あ、別に用事がなくても全然いいんやけど』


すっかり頭から飛んでいた用件を思い出し、わたしは黙り込んでしまう。


すると瑠衣は思いついたように、言った。


『電話で言いにくいことやったら、俺、今から会いに行こうか?』

「っ……、でも」

『原付で飛ばしたらそんなに時間かからへんし』


いや、でも、そんな、と煮え切らない返事でどもるわたし。


なんではっきり断らないんだ。

もう遅い時間だし、わざわざ来てもらうような用件でもないよ。

そう言えばいいのに、なぜか言いたくなくて――


『ああ~、違う。ごめんなさい!』


いきなり瑠衣に謝られ、わたしは面食らった。


『俺、ちょっと今カッコつけてました。ごめん』

「え?」

『ほんまは、“行こうか?”じゃなくて“行きたい”ねん……。
先生から電話もらえて、正直、めちゃくちゃ舞い上がってる』

「……」


会いに行ってもいい? 

切ない声でそう聞かれ、断れるわけがなかった。