そのとき突然、けたたましい音で携帯が鳴り、わたしは飛び上がった。


“着信:090-XXXX-XXXX”


名前の表示されていない番号は、もちろんさっきわたしが押したのと同じもの。


「もしもしっ」

『あ、水野先生?』


その声を聞いたとたん、自分でもあきれるくらい嬉しさが湧き上がった。


『すんません。さっき出られなくて』

「こっちこそ、いきなり電話してごめんね。あの、もしかして忙しかった?」

『いや、全然』


瑠衣はあっけらかんと笑う。


『実はさっきまでリビングにいたんやけど、両親がケンカ始めてもーて。
そんなとこで電話出るの気まずいから自分の部屋に避難してきたんです』

「そう……大丈夫なん?」

『まあ家族やし、ケンカくらい普通ちゃうかな』


瑠衣の声には、不安そうな色なんか微塵もない。

きっと素敵な家庭なんだろうな。

わたしにはそんな瑠衣が、少し羨ましかった。


『で。何か用事あったんすか?』