教室の外を、聞きなれた話し声が通り過ぎようとする。

瑠衣たちだ。

その中の栗島くんがこちらに気づいて、声をかけてきた。


「涼子~。俺らもう帰るけど、お前は?」

「あっ、わたしも一緒に帰る」


涼子ちゃんはいつも通りの表情に戻り、鞄を肩にかけ直す。


「じゃあ失礼します」

「うん。さようなら」

「水野せんせー。さようなら」


栗島くんが廊下から手を振りながら言った。

他の男の子たちもそうしてくれたので、わたしも振り返した。


彼らはぞろぞろと、ロビーへ続く階段の方へと歩いていく。


……瑠衣。


帰っていく彼らの後ろ姿を見送りながら、わたしは無意識に心の中で名前を呼んだ。


ふと、一番後ろを歩いていた瑠衣が、足を止める。

ふり返った彼と目が合って、わたしは焦った。



――“またね”


瑠衣の唇が、音を出さずにつぶやいた言葉。


そしてポケットから出した手を小さく振ると、彼は友人の輪にさりげなく戻り階段を下りていった。



胸が、しぼられたようにキュンと痛んだ。