「あんまり気にしない方がいいですよ」

「え……」

「さっきの、あれ。廊下からたまたま見てたんですけど」


冷たくなった頬に再び血が集まるのがわかった。

あんな場面を見られてしまったなんて、恥ずかしかった。


だけど涼子ちゃんは気にする様子もなく、正義感の強い瞳で言葉を続ける。


「さっきの子たちって同じ高校なんやけど、瑠衣のファンらしいんです」

「片瀬くんの?」

「あいつアホのくせに、けっこう人気あるんですよ。
周りの男子もモテる系が多いし。

やから最近あいつらと仲良くしてる水野先生が、一部の女子は気に食わないんちゃうかな」

「そう……」


喉の奥から苦いものがこみ上げた。


彼女たちの言動を“単なる嫉妬”と割り切っちゃいけないんだ。

だってわたしはセンセイという立場で、
生徒からそんな風に思われること自体、おかしくて。