「ほんま、予備校通ってる意味ないし」


辛らつな言葉がわたしに突き刺さり、教室の温度を下げる。


声は、後ろの方の席からだった。

茶色い髪をゆるく巻いた女の子がふたり座っていた。


「これからは他の先生の授業受けるようにしよ」

「そうやね」


ガタガタッ、と大きな音を立てて椅子から立ち上がると、その女の子たちはわたしを一瞥し、教室を出て行った。


「……」


顔から血の気が引いていくのを感じる。

気まずさを払うように、そそくさと帰り支度を始める生徒たち。

そのとき、あることに気が付いた。


……なんか今日は生徒が少なくない?


いや、今日は瑠衣やその友達が他の授業に行っているからそう感じるんだ。

普段は彼らがいてくれるから、席が埋まっているような気がしていた。


でも、彼らがいないときは、逆に以前より生徒が減っているんじゃないの?


「水野先生」


呼ばれて顔を上げると、目の前に涼子ちゃんが立っていた。