今でも時々、夢の中でわたしは犯される。


相手は叔父のときもあれば、なぜか母だったり、お父さんだったり、顔も知らない実の父だったりもする。


自分の叫び声で飛び起きては、暗闇の中、必死で確認した。


“大丈夫。わたしは何もされていない”

“今のは、ただの夢だから……”


だけど一瞬の安堵は、次の瞬間、絶望に変わる。



今見たものが夢だったからといって、それが何になるのか。


わたしの体に刻まれた過去さえも、夢に変わるとでもいうのか。




そんな奇跡は

絶対に起こらない。










わたしの話が終われば、あとは波の音だけが残った。


瑠衣は口を開こうとはしなかった。


あまりにも長い沈黙なので怖くなってきて隣を見ると、歯を食いしばりうつむく彼の姿が月明かりの下に浮かんでいた。