ほんとはね。
短い話ではあるけど、毎日毎日、小説を書いてくるのは大変なんだよ。
三年生だし、勉強もやらなきゃいけない。
でも……何もしないまま、卒業式を迎えて、先生と会えなくなるよりはずっといい。
こんなことを言ったら、先生は呆れるかもしれないけど。
大人に恋をした子供は、精一杯背伸びをするしかないんだから。
「ここの『やり抜ける』って言葉だけど……」
先生が赤ペンで印をつける。
「『やり抜く』って言葉があるから、こう書いたんだと思うけど、『やり抜ける』って使い方は間違ってるんだ」
「へぇー……」
本当に先生の手って綺麗。
たくましいのに、指が長くて。
前髪もさらさらしてて……触りたいくらい。
「──聞いてる?」
怪訝そうな先生の声で、我に返った。