「俺、この最後の一文好き」
読み終えた先生が、原稿用紙の角をとんとんと整えて言う。
「先生ならそう言うと思った」
──先生。
あたしは子供なりに、精一杯背伸びして恋をしていた。
付き合って、とは言わない。
だからせめて、それだけはわかってください。
「先生、あたしね、大人に恋しちゃったんだ……。
しかも、相手は教師」
あたしは先生をまっすぐに見据えて言った。
「……うん」
先生は、あたしの言葉に驚くことはなかった。
生徒が教師に恋をするなんて、
きっと馬鹿げてると思う。
でもあたしは、
確かに本気で愛していた。
一筋の涙が、頬を伝った。
「先生、大好きでした。」