「お待たせしました!なかなか採点が終わらなくて……すみません」


英語の先生がそう言って頭を下げた相手は……



「え……う、そ……」



見たくなかった。
見なければよかった。



「いえ、全然待ってませんよ」



聞き慣れた大好きな声が、あたしの耳に重く響く。



どうして、先生……?



あたしの大好きな国語表現の先生は、英語の先生の右手をとると、



「じゃあ行こうか」



照れくさそうに笑った。


何、何なのあれは?


先生はどうしてあの人と一緒に帰ってるの?


どうして手を繋いでるの?


どうして、あんなに嬉しそうに笑ってるの?


あんな先生は見たことがない。


先生は、あたしの前ではあんなふうに笑ってはくれない。


それが、彼女が先生にとって特別な存在であることを物語っていた。