「親御さんからの手紙なら、なんで読まないわけ? 瑚春ひとり暮らしだし、心配して送ってるんじゃないの?」

「そうかもね。それなりには、大事に育てられたと思うし」

「なら、なんで」


振り返った。

冬眞がわたしの顔を見て、口を閉じて、眉を寄せた。


その仕草で、今自分がどんな顔をしているのかということに、初めて、気が付いた。


気が付いて、でも、気が付かないふりをした。


胸元に手を寄せる。

分厚い服の下に、固い異質な感触がする。


繋がりの、証明。




「……あの人たちは、わたしから大切な半分を、奪った」



それは、何よりも大切な欠片。


代わるものなんて他にない、たったひとつの片翅。



わたしの、居場所。




大事だった、大切だった。

きみが居ればそれでよかった。


たったそれだけでよかったのに。


わたしの世界は、きみが消えて、時を止めた。