わたしは少しだけ早足で歩いて、前を行く冬眞の横に並んだ。

冬眞はちらりとこっちを見たけど、またすぐに空を見上げて、だけどなんとなく歩幅を合わせてくれたのがわかったから、わたしはわざとゆっくり歩いた。


お互いの体温が伝わらないくらい距離をあけた場所で、きっとお互い違うことを考えて。

わたしたちは、並んで歩いている。



「人と話すの、好きなの?」


道端に転がっていた石ころを蹴った。

斜めに飛んでいったそれを、今度は冬眞が蹴飛ばした。


「うん、好き」

「確かにあんた、人懐こいもんね」

「だって、知らない人と喋るの楽しいだろ? 今までにない、発見って感じで」

「よくわかんないね」

「瑚春はまったく懐かないもんな、人に」

「真面目で用心深いだけだよ」


あんたと一緒にしないでくれ。

面倒くさいからそんな一言は呑み込んで、最後の坂を駆け足でのぼった。


息を吐いて、振り返る。

坂道を囲むガードレールの向こう側に、何色もの光が灯る、丘の下の街が見下ろせる。

山に囲まれた内陸の街は、まるで箱の中の宝石みたいだ。


乾いた夜の空気の中、その光景はとても綺麗に見えて、なんだかすべてが、夢の中みたいに思える。


そう、今ここに居ること、そのすべてが夢のような、そんな風に。