「……ちょっと店長」

「ん?」

「まわり見て」

「へ?」


あほな声を上げた店長が辺りに目線を滑らせる。

一瞬見られているのが自分だとでも思ったんだろうかにやけ顔になって、でもそれが気のせいだと気付いてちょっと顔をしかめた。

だけどすぐに、何かを思いついたように目を細め、悪い顔で口元を歪める。


「なるほどな、使える」


呟いて、店長はそっと冬眞の肩を押した。



たとえば店の良し悪しというのは、商品の質やスタッフの接客で決まるものだと思うんだけど。

それよりもまず肝心なのは、その店に立ち寄りたいという第一印象なんだろう。

それは主に、店の雰囲気もそうだけど、スタッフの様子で、決まったりもする。



「……瑚春」

「はい」

「あいつ雇おう」


店の入口のところ。

丁度外を歩く人たちからよく見えるところに冬眞を置いておくだけで、いつもの平日の倍は客の入りがあるもんだから不思議だ。

当の本人は首を傾げたまま店長の言うとおりただ突っ立っていて、店長はカウンターに立ちながら繁盛する店を眺めてほくそ笑んでいる。