「……店長、ほんとにいいんですか?」

「ん? なに、連れて来いって言ったのは俺だしな」

「でも……それ、猫じゃないですけど」


当たり前だけど、見ればわかるけど。

でも昨日までの店長は“トーマ”を猫だと思っていたわけで、猫だと思っていたからこそ言った言葉を、そのまま当てはめるのもどうかと思ったり。


「まあ、でも、こいつなら一緒にいてもアレルギー出ないから、俺としちゃあ、ありがたいけどな」


冬眞と出会ってから、溜め息を吐く回数が、あきらかに増えた気がする。




そして今に至るわけだ。

いつに間にかすっかり打ち解けてしまったふたりに、もう関わるのすら面倒で、わたしは男ふたりを尻目に見ながらひとりで勝手に仕事をしていた。


だけどふと、気付く。

いつもより妙に、店内に女性客が多いことに。


「……ん?」


いや、元から客層のほとんどが女性だったんだけど、今日はいつにも増して人が多く思える。

それはもう、若い子から年配の方まで。


「……」


そしてまた気付く。

彼女たちの視線が、数秒おきにちらちらと、冬眞に向かっていることに。