「お洒落なものばっかりですね。アンティークで、すごくかわいい」

「だろ? だって俺が直接北欧まで行って買い付けてんだもんよ」

「へえ、そうなんですか。仕入れにヨーロッパ行くなんて、楽しそうだなあ」

「お、じゃあ今度お前も一緒に行くか?」

「ねえあんたら、今仕事中なんだけど」


いつの間に仲良くなったのか、客がいないのを見計らって女子のように小物談義で盛り上がる大の男ふたりの背中に冷たい視線を送る。

大の男ふたり、冬眞と店長はそろってゆるりと振り返り、嫌なものでも見るような目をわたしに向けた。


「見ろ冬眞、瑚春がまた怒ってる」

「あ、店長さんもよく怒られるんですか? 俺もなんですよ。いつもぷりぷりしてて」

「誰のせいだと思ってんのあんたら」


気の合う男が集まるとこんなにもうっとうしくなるもんなのか。

わたしは大きな溜め息を吐きながら、もうふたりのことは無視して自分の仕事を進めることに決めた。

どうせ仕事をさぼっていて困るのは店長だ。

せいぜいあとであたふたしてろ。

と心の中だけでせせら笑いながら、発注をかける商品のチェックを進める。



──なぜ、こんなことになってしまったのか。


そんなことは考えるまでもなく、冬眞がわたしを脅したせいであり、そしてわたしがその卑劣極まりない脅しに屈し、仕事場にこいつを連れてきてしまったことが原因だ。


憂鬱な気分のまま、ふたりそろって家を出て。

冬眞はまだこの街に来たばかりなのか、見る景色全部が真新しいようで、店に辿り着くまでの間中ひたすらひとりで勝手に楽しそうに喋っていて。

わたしはそれをことごとく無視して、いっそのこと撒いてやろうかとも思いつつ冬眞の数歩前を歩いていた。