「俺も連れて行って」


今日は温かいし適当にワンピースでいいか。

そう思いながらクローゼットからニットのキャメル色をしたワンピースを引き出していると、あろうことか居候が突如そんなことを言いだした。


「連れて行ってって、どこへ」

「今から瑚春が行くところへ」

「わたし仕事に行くんだけど」

「つまり仕事に連れて行って」

「ばかかお前は」


冬眞には、わたしが街の商店街にある雑貨屋で働いていることは言ってある。

言ったところで場所なんてわかんないから勝手に来ることもないだろうし、わたしがちゃんと働いているちゃんとした社会人だということを知らしめるために言ったんだけれど。

まさか興味を持たれるとは。


「お願い、邪魔にならないようにするから」

「絶対だめ。いい? わたし仕事に行くんだよ? 遊びに行くんじゃないんだからね」

「手伝うよ、俺も」

「ばかかお前は」

「それさっき聞いた」


にこりと笑いながら首を傾げる姿は、なんだか反撃する意欲を失わせる。

僅かに引いた身に、冬眞の笑顔が突き刺さった。

冬眞はその場から動いていないはずなのに、なぜだかまるで、追い詰められているような感覚だ。


う、と言葉を呑み込んで、とりあえず引きつった顔で睨みつけて。

それと同時に、そう言えば店長がこんなことを言っていたなと、昨日のことを思い出す。