きみがいないからもう泣けない。
泣けないから、笑えもしない。
なのに。
ねえ、冬眞。
なんであんたは、わたしに泣けって言ってくれるの。
わたしに笑えって言ってくれるの。
なんであんたは、ハルカと同じように、わたしの、側に居るの。
「……俺は」
ゆるりと、冬眞は一度瞬きをした。
それは小さなひとつの動作に過ぎなかったけれど、なんだかとても優雅で、見惚れてしまうほどだった。
全然似てないその顔が、誰かの面影と重なる。
一瞬、ハルカが会いに来たのかと思って、だけどそんなわけはなくて。
そこに、居るのは、まだ見慣れたとは言えない、そいつの、姿で。
「俺は、瑚春に、涙と笑顔を返すために、ここに居る」
冬眞が笑う。
それがあまりに優しくて、うかつにも、泣きそうになった。