そっと頭に手が乗る感触。
わしわしと、手のひら全部で髪を撫でて。
昔はいつも誰かにそうされてて、それがすごく大好きで。
誰か、なんて、それはたったひとりしかいなかったんだけど。
「何もないなら、それでいいよ」
この声は、きみの声じゃない。
この手は、きみの手じゃない。
この心は、決して、きみの心じゃないのに。
「だけどもしも何かがあって、それがひとりじゃ抱えきれないのなら、俺にも分けて」
わかっているのに、どうしたって。
きみの顔が、消えないんだよ。
「瑚春はすぐに、ひとりで抱え込むから」
なんでなの、ねえ、ハルカ───
「……だま、って……」
「え?」
「黙ってって、言ってるの……!」
自然と動いた右腕が、触れていた手を跳ね除けた。
手の甲がじくりと痛んで、それと同じ痛みを相手も感じているなんて、思いもしないで。
「あんたが……わたしの、何を知ってるっていうの!!」
だけど、どこかが、死にそうなくらい、痛い。