家に帰ると、豪華な食卓が用意されていた。

いや、豪華というほど豪華じゃないかもしれないけれど、少なくとも普段わたしが食べている夕食に比べれば天と地ほどの差がある。

小さなテーブルの上になんかお洒落なサラダやらオムレツやら肉料理やらが並んでいて、ちょっとしたレストランにでも入ってしまったような気分だ。


「……材料、買ってきたの?」

「まさか。買いに行きたかったけど、瑚春お金くれなかったし」

「だよね」


ということはうちに元々あった食材だけでこれを作ったのか。

冷蔵庫の中身なんて、ほとんどあってないようなものだったはずなのに。

……おそるべし。


「まあちょっと、大家さんにもわけてもらったけどね」

「あんたそれもうやめてよ……今度会ったら何言われるかわかったもんじゃないから」

「お返しはいらないって言ってたよ」

「そういうこと言ってんじゃないっての」


深い溜め息が漏れる。

だけど冬眞はわたしの悩みなんて何ひとつ理解しちゃいないから、さっさとスープやお茶の準備を始めた。

わたしは鞄とコートとマフラーをベッドに投げて、働くその姿をじっと眺めていた。