そんなの偶然に決まってる。
言った本人にとっては、何が偶然かすらわからないような偶然だ。
驚いたけれど、本当に、こんなにも重なるものなのかって。
だけどやっぱりこれはただの偶然でしかなくて。
たまたま、本当に、奇跡みたいな偶然の成り行きでしかなくて。
それに、たとえどんな答えが返ってきたとしても、そこにはなんの意味も、あるわけがないんだけれど。
細く息を吐いて、止まっていた足を動かした。
冬眞が「おい」と呼ぶけれど、それには応えず、帰り道を進んだ。
冬眞は慌ててわたしの横に並ぶと、やっぱり不思議そうにわたしを覗いてきた。
だけどそのうち小さく笑って「なるほどな」と呟くから。
「……何がなるほどなわけ?」
どうせ的外れなことだろうから訊きたくもないけれど、こいつが言い出すのを待つのもうっとうしい。
「だってあれだろ? 瑚春、俺が素敵なこと言ったから、照れてるんだろ」
ほらやっぱり見当違いも甚だしい。