わかるわけないのに。

わたしがあんたを知らないのと同じくらい、あんたはわたしのことを知らないんだから。

それなのに、そんな、適当なことを言って。


「あ、疑ってる?」

「……疑う前に何ひとつ信用してないよ」

「ひどいなあ。俺は本当の事しか言ってないのに」


じゃあ試しに。

冬眞が楽しげに呟いて、わたしについと目を向けた。


ちかちかと刻まれる、街灯の淡い光の下。

少し長めの黒髪も、夜の空と同じ色の瞳も、何ひとつ似ていないのに、その顔が、誰かと重なった気がした。



「あの星の裏側で俺の名前を呼んでみてよ。

どこに居たって見つけてあげる」



───心臓が、止まるかと思った。


心臓だけじゃなく、思考とか、呼吸とかも、全部。

本当に、その瞬間だけは、何もかもが、止まってしまったんだろう。


実際、前に進んでいた足を止めて、わたしはその場に立ち尽くしてしまったから。