錆びた古い街灯の下。
それよりも明るい自販機の横。
置かれたゴミ箱と並ぶようにして、黒いモッズコートに身を包み、コンクリートの上に座っている。
「……冬眞」
ぽつりと漏らすと、夜空を見上げていた瞳がゆっくりとこちらを向いた。
白い息を吐き出して、わたしを見つけると、寒そうに固まっていた顔がゆるりと微笑む。
「ああ、瑚春。おかえり」
「あんた……なんでここにいるの?」
「ん? 瑚春が帰って来ないから、心配で途中まで迎えに来たんだ」
立ち上がって、温めるように息を吐きかけた指先は、随分と赤くなっている。
本当に、長いこと、ここで待っていたんだろうか。
「……仕事なんだから、遅くなることもあるって」
「わかってるけど、何かあったのかなとも思うだろ」
「ん……でももう迎えになんて来なくていいから。寒いし」
財布から500円玉を取り出して、自販機に入れる。
ホットのブラックコーヒーとミルクティをひとつずつ買って、コーヒーの方を冬眞に渡した。
冷え過ぎた指先に、熱い缶は刺激が強い。
それでも寒いよりはましで、二人並んで、それを飲みながら歩いた。