ペンダントを服の中に戻し、誰にも聞こえない小さな小さな息を吐いた。

それから深く息を吸って、軽く、瞼を閉じた。


真っ暗闇の中、ふいに、奇妙な同居人の顔が浮かんで、それから、朝に店長としていた会話が思い出された。


『俺はユーレイだって』

『ユーレイって、本当にいると思います?』


いるわけないだろ。

そんなことわかっている。


そんなの非科学的で、馬鹿馬鹿しくて、ただの冗談で、現実逃避で。

人は死ぬまで生きるだけで、死んだらすべて消えて、それでおしまいだって。


そんなこと、わかりきってるくらいにわかっているのに。



瞼を開けた。

閉じる前と景色は変わっていなくて、そんなことは当たり前で。


わたしは、やっぱり、今も、ここにいた。



「……ユーレイでもいいから、会いに来てよ」


唇から漏れた言葉は、どこにも響かない。

わたしの中だけに残って、いつまでも、心臓の奥で鳴り続ける。


ユーレイでもいいから、会いに来て。


触れなくても、見えなくても、それでも構わないから。

ただ、きみに、会いたいだけなんだ。



ねえ、ハルカ───