「……誕生石」


それ自体は有名だろう。自分の月のそれぐらいなら、知っている人も多いはずだ。


石になんてまったく興味のないわたしでさえ、それだけは、小さな頃から知っていた。

ただし、自分から得た知識じゃなく、誰かさんのおかげのものだけど。



「お、いいねえ誕生石」

「贈り物とかにも選びやすいですしね。誕生日プレゼントで悩んでる人にはお勧めできます」

「じゃあ小さくていいから、そのコーナーちゃちゃっと作っちゃって。今月の誕生石はさ、他のよりちょっと大々的な感じで」


他人事だからか簡単に言って。

ひらひらと手を振り去って行く店長の背中を睨みつけていたら、それに気付いたわけではないだろうけどふいに振り返ったから驚いた。

たぶん向こうもわたしの顔に驚いたんだろうけれど、そんなのはいつものことだから特に気にはしていない。

そして笑って、自分の鎖骨の辺りを指差して。


「そういえば、瑚春のそれも、誕生石なんだろ?」


髭面をにこりと微笑ませる。

そうして再び向けられた背中をじっと見つめたまま、わたしは自分の首元に手を当てて、普段は服の中にしまっている“それ”を布地の上から握り締めた。


そこには、歪な形をした、血のような赤黒い石がぶら下がっている。


ガーネット。


真冬の1月に生まれたわたしの、誕生石。