「……店長」
「ん?」
「ユーレイって、本当にいると思います?」
「急だねえ」
「急ですけど」
うーんと、考えるふりをして、でもたぶん本当は大して考えていないんだろう。
無駄に神妙な面持ちで呟く。
「いないな」
「なんでですか?」
「だってよく言うだろ。魂だけで存在できるんなら、体を持っている意味がないって。俺はその説に賛成だね。っていうかそうであってほしい。うん、むしろ存在するな、幽霊」
「……店長、ただユーレイが怖いだけじゃないんですか?」
「馬鹿言うんじゃねえよ。俺が怖えのは世界中でゴキブリとピーマンだけだ」
「……そうですか」
店長の意見はどうであれ、確かにユーレイなんてものは、存在しないに決まってる。
そんなものいるわけがない。
なんて馬鹿な問い掛けをしてしまったんだろうって、今さら悔やんだって、仕方ないけど。
死んだらそれで終わり。
そこで何もかもが消えてなくなってしまうんだ。
『本当だ。俺は一度、死んでるんだ』
そんな馬鹿みたいな話、あるわけ、ないのに。