「でも猫ってかわいいよなー。もう体かゆくって仕方ねえんだけど、それでも抱っこしたくなるよなー」
「そうですね」
まだ一人で猫談義を続けている店長に、床を掃きながら適当に相槌を打つ。
「もふもふだもんなあ……瑚春の猫ももふもふしてるだろ? 猫はみんなそうだもんなあ」
「……どうですかね」
というかそもそも猫じゃないし、もふもふって何を表しているのかわからない。
「そういや瑚春、その拾った猫にちゃんと名前付けたげたのかよ? お前そういうの無頓着そうだけど」
「あ、はあ……えっと……トーマ?」
「トーマかあ。瑚春にしてはかっこいい名前付けたなあ。あ、そうだ、明日そいつ連れて来いよ。俺アレルギーに負けねえから」
「何言ってんですか」
「俺アレルギーに負けねえから」
「2回言わなくていいですって。ていうか、無理ですから」
えー、と店長は文句を垂れるけれど、連れて来られるわけがない。
わたしが拾ったでかい捨て猫は、店長が思っているような可愛いもふもふの子猫じゃないのだ。
「……」
大きな拾い物。
決して拾いたくて拾ったわけじゃない拾い物。
なんか、変な、ひと。
結局まだ何もかもが分からなくて、分かっているのは名前と料理の腕だけで。
他は一切何も知らない。
誰なのか、どこから来たのか、何故、わたしの側にいるのか。