冬眞は、わたしがもそもそと食べ続けているのを確認してから、ようやく自分も食べ始めた。

自分で作ったくせにやけにおいしそうに味わって食べているもんだから「おいしそうに食べるね」とそのまんま口にしてやったら、


「まあね。子供の頃は、あんまりこういうの食べれなかったから」


と言って笑っていた。


「なにそれ、カップラーメンも食べれなかったの? もしかしてあんたん家ド貧乏だったとか?」

「言うねえ、きみ」

「あ、そっか。だからホームレスなんだ。納得」

「いやいや、言っておくけど別に普通の家だから。格別金持ちなわけでもないし。ふつう」

「……ふうん」

「あ、信じてないね、その目」

「あんたのことは何一つ信じてないよ」


ずずっと麺をすする。

あ、料理のおいしさだけは信用してあげてもいいかもしれない。


その他の事は、本当に、まるで、不信感すら抱けないくらいに、何もわかっていないけれど。


「瑚春」

「なに」

「これからよろしくね」

「いますぐ出て行け」


ちょっと大きな捨て猫を拾っただけだ。

なんて、都合の良い事、思えるわけがないじゃないか。