「俺も、自分の住む町に帰る」
「……わたしのところ、出てくの?」
「なに、寂しい?」
悪戯気に笑って、冬眞が顔を覗きこんでくる。
わたしは少し考える素振りを見せて。
「うん、ちょっと」
「なんだよ、やけに素直だな」
「わたしはいつだって素直だよ」
「うそつけ。意地っ張りなくせに」
くしゃり、と冬眞がわたしの髪を撫でた。
大きな手で何度も何度も撫でて、それからいつも通りの表情を浮かべる。
「大丈夫。いつでも会える。側に居る」
そう言って、一度だけ、ぎゅっとわたしを抱き締めて。
「……会いに来てくれる?」
「ああ。瑚春が呼ぶならいつだって行くよ」
「どこにだって?」
「地球の裏側にだって」
「すぐに来る?」
「走って行く」
だから大丈夫。
言い聞かせるように、冬眞はもう一度、そう呟いた。
「あと、それから」
「ん?」
「誕生日おめでとう、瑚春」
「うん、冬眞も」
「ああ、ありがとう」