ハルカのお墓は、よく見る縦型のものじゃなく、洋式の横に長い形のものだった。
そっちの方がお洒落で、ハルカによく似合っていると思った。
「……ただいま、ハルカ」
こんなところに、きみは居ないかもしれないけれど、形式的に、そう言った。
おかえり、なんて言葉はもちろん返ってくるわけがない。
風の音が、響くだけだ。
お墓に、花は添えられていなかった。
多分周りにこれだけ咲いているから、この時期には置いていないんだろう。
でも、お墓はほこりひとつなくて、とても綺麗に磨かれていた。
両親がよくここに来ている証拠だった。
お線香なんて上げない、そんな辛気臭いことハルカは好きじゃない。
そんな煙焚くくらいならもっと火を点けて焼き芋を焼こうって言うだろうし、お経を読むくらいなら下手な鼻歌を歌ってくれって言うと思う。
お供え物もいらない、別に欲しいものは特にない。
きみが来ればそれでいいよって、ハルカは、言う。
「瑚春、俺も、手を合わせていい?」
お墓の前にしゃがむと、冬眞も横に座った。
「いいよ」答えると、冬眞は小さく笑って、両手をそっと合わせた。
わたしも同じように、開いた手のひらを合わせて、瞳を閉じる。
真っ暗な瞼の裏、その中で、きみの笑顔が浮かんだ。
もう苦しくはなかった。
ちゃんと、きみに、言いたいことが、言えた。