近いと思っていた場所でも、歩いて行こうとすると案外遠かったりもする。

隣町の隣町なんて近所みたいなものだけど、それは自転車や車で行っていたからであって、本当は結構な距離があったらしい。


日本からアラスカに行くくらい遠いと思っていた子どもの頃ほどじゃないけれど、日本からモンゴルに行くくらいは遠い場所に感じてきた。

タクシーでも乗ればよかったかな、そう後悔し始めたところで、冬眞が声をあげた。



「この道から、のぼるんじゃないの」


今まで歩いてきたまっすぐに続く道路から、1本綺麗な坂道が分かれている。

脇には「桜山霊園」と書かれた看板があり、坂の上の方向へ矢印が向けられていた。


坂道は、両脇に生える大きな木が自然のアーチを作っていて、なんだか不思議な情緒を醸し出していた。

少し薄暗いけれど、怖い感じじゃない。

隙間から降る日の光が淡く世界を彩って、訪れる人を優しく招いてくれているみたいだ。



「行こうか、瑚春」



一歩先に出て振り返る冬眞に、こくりと小さく頷いて、わたしは最後の坂道をゆっくりとのぼって行った。




霊園は広くて、いくつかブロックに区切られているようだった。

いつかの手紙に書かれていた案内の通りに行くと、ハルカのお墓の場所は、一番上。


そこに辿り着くまでに、いくつものブロックを通り過ぎた。

お墓が立つところ以外の一面が芝生で、ところどころ石畳が敷いてあり綺麗に整備されている。

想像していた古い墓地とは随分雰囲気の違う明るい場所だ。


だけどなるほど、確かにまだ建っているお墓は少なく、空いている区画の方が断然多い。

おまけに下の方から順に埋まっているようで、上に行くほど少なくなっているものだから、一番上にあるハルカのお墓はどれだけ寂しいことだろう。


でも、もう、今は───