地元の駅までは、在来線で2回電車を乗り継いで、片道だいたい4時間かかる長旅だ。
その間、昨日寝るのが遅かったわたしはほとんど眠っていたけれど、冬眞はずっと起きて、わたしに肩を貸していてくれた。
2回目の乗り換えのあと、地元のローカル線に入ってからはさすがにすっかり目は覚めた。
ときどき大きく揺れる窓の向こうが、少しずつ懐かしい景色に変わっていくのを、じっと眺めていた。
「そうだ、瑚春。これ」
冬眞がわたしの手を掴んで、上を向いた手のひらに何かを置いた。
ひやりと冷たい感覚に軽く驚きながら見ると、それは昨日壊れてしまったわたしのペンダントだった。
「……直ったんだ、これ」
「金具が歪んで外れてただけだったよ。戻したけど、でもそろそろ新しいものに替えた方がいいかもね」
「替えなきゃだめ?」
「そりゃあ、もう結構古くなってるから」
チェーンは、変色しにくくて切れにくい、丈夫な素材で作ってある。
だけど、新品の頃の光沢はすっかり無いし、結局外れて、壊れてしまった。
「ちゃんと時間が進んでる証拠だ。止まってるもんなんて、どこにもない」
ペンダントを、もう一度首から下げる。
金具を留めるのに手こずっていると、冬眞が笑いながら「貸して」と言って、わたしの代わりに留めてくれた。
慣れた、少しだけの重い感覚。
きみがくれた宝物のひとつ。