「……ハルカ……ハル、カ……」

「……瑚春も辛かったんだろ。ひとりで真っ暗な道に立ってたんだよな。ずっと、見つけてもらうのを、待ってたんだ」

「……ハルカの名前を……ずっと、呼んでた」

「そうだな」

「見つけてほしくて、何回も、呼んだ」

「ああ。ぜんぶ、春霞には聴こえてた」



抱き締められていた腕がふっと緩む。

少し距離の開いた先に見えたのは、冬眞の、顔で。

やっぱり、すごくすごく優しく笑っているけど、長い睫の先が、少しだけ光っていた。


冬眞も泣いたのかな。


あんまり泣かないハルカの代わりに、泣いてくれたのかな。



だったらきっと、ありがとうって、ハルカは言ってる。



『俺の代わりに泣いてくれてありがとう』



笑いながら、そう言ってる。





「瑚春はいつだって、ひとりじゃないよ」



冬眞の手が、わたしに触れる。

さっきみたいに、確かめるように、髪に触れて、肩に触れて、頬に触れて。



「こんな世界に、誰も居ないなんて思わないで。

いつでも瑚春だけを想っている人が居る。瑚春のしあわせを願っている人が居る」



それから、赤い石の付いた、左耳にも、触れて。