「……春霞は、ずっと探していたんだ。瑚春を、ずっと」
泣き叫ぶ声の向こうで、静かな静かな響きがする。
「死んだくらいで見放すもんか。ただひとつの、大切なものを」
大切なもの。
何より、どんなものより。
きっと、絶対に、失くすことなんてない、大切なもの。
「聴こえてる? 俺の心臓、今、すごく落ち着いてる。安心してるんだ、瑚春がちゃんと、泣いているから」
聴こえてる。
鳴っている。
「こんな姿になっても、春霞はずっと、瑚春のことを想ってるんだ。
瑚春がひとりでいると心配だ。泣くのを我慢してると心配だ。
前を向いて歩けていないと、苦しいくらい、心配だ」
いつもそう。
わたしは、そうやって、きみに、心配ばかりかけて。
「それから、しあわせでいてくれると、すごく、うれしい」
きみに、しあわせに、なって、ほしくて。