『5年前の明日』
明日。
明日は、わたしの誕生日。
わたしが生まれた日。
わたしが、誰かと一緒に生まれた日。
特別な日。
5年前の明日は、特別な日の、もっと、特別な日。
わたしと誰かが、20歳になる、大切な、誕生日。
5年前の明日は、生まれて初めて、その誰かが、わたしの隣に、居なかった日。
今日は、誰かの、命日。
5年前の今日は、ハルカが、死んだ日───
「……冬、眞」
震えていた。
声も、指先も、心も、ぜんぶが。
決して寒さではない理由で。
体中が、震えていた。
「瑚春、もう、わかってるだろ」
自分の意思じゃ動かせない指先を、冬眞が掴んで、もう一度、傷のある胸元に寄せた。
冷え切った指先に触れる熱い体温。
トクン、トクン、と打つ、静かな、鼓動。
「ここに居るのが、俺に心臓をくれたのが、誰なのか」