暗闇の中で、小さくうずくまって、ひたすらに、心の中できみの名前を呼んでいたこと。
怖くて、不安で、泣きたくて泣きたくて、だけど涙は、流さなかったこと。
きみが見つけてくれたこと。
どこに居たって、きみは探してくれたこと。
わたしを呼んでくれたこと。
きみのおかげで、いつも、大きな声で泣けたこと。
そして一緒に、笑ったこと。
「なあ、瑚春」
目の前の冬眞の手が動く。
赤い石から離れたそれは、ゆっくりとわたしに伸びて、髪と、首筋と、肩と、頬に触れる。
確かめるように。
ここに居ることを。
わたしがここに、居ることを。
「“俺”は、あんたを探していたんだ」
ずっと、ずっと。
5年前の、あの日から。