大切な贈り物。
『俺は、これまでにいくつも、いろんな人からプレゼントを貰ったけど、その中で、たったひとつだけ、とても大切な、贈り物を貰った』
いつか言っていたこと。
とてもとても綺麗な表情で、冬眞がわたしに、言ったこと。
『そのプレゼントは、俺の───』
冬眞の、世界を変えた、贈り物。
「……心臓」
掠れた声の呟きに、冬眞は少し目を細めて、こくりと頷いた。
「うん、そう。俺は、20歳の誕生日に、心臓を貰ったんだ」
その奥に在るものを確かめるように、冬眞は自分の胸に、もう一度手を当てる。
大きな古い傷。
今もその奥で鳴っている、冬眞のじゃない、誰かの心臓。
わたしの頭の中で、同じように、ドクンドクンと鳴り響く、誰かの、心音。
「5年前の明日。俺の、20歳の誕生日。
俺は、自分の心臓を捨てて、それから、空っぽになった場所に、新しい心臓を貰った」
触れていないのに伝わってくる音。
……ちがう、これは、ずっと、わたしの中で鳴っていた音。
ずっと聴いていた。
いつも聴いていた。
生まれる前から、聴いて、いた、音。