微かに湯気を立ち上らせながら、髪を濡らした冬眞が部屋に戻ってきた。

元彼は背の高い人だったけれど、そんな彼の来ていたサイズが、冬眞にもぴったり合っている。

最初に思った通り細身だけれど、背はすらりと高く、一見してモデルでもやっていそうな感じだ。

なんだかこいつが頼めば、拾ってくれるお金持ちのお姉さんなんてたくさんいそうな気もするけれど。


じっと見つめていると、その視線に気付いたのか、冬眞は頭に置いていたタオルの隙間からわたしを覗いた。

こてんと首を傾げて「あんたも入るか」なんてまるでここが自分の家であるかのように呟くから。


「……ねえ、冬眞」


座ったベッドの上から呼べば、冬眞はゆっくりとわたしの目の前に腰を下ろした。

カーペットの上で座っている冬眞を、わたしは見下ろす形になる。


瞳の色はとても黒くて、まるで夜がそこに沁み込んでしまったかのようだ。



「あんた、一体なんなの」


どうでもよくて、とても重要なこと。


今、わたしの目の前に居るこの男が、一体何であるのか。

知らなくてもいいことだけど、それでももうどうしようもないほどに、わたしはこいつに関わってしまっている。

知らなくてもいいことだけど、あまりにも、わたしはこいつを知らなさすぎるから。


冬眞、あんたが、なんなのか。